第2話 好きとスキと (14) [△ ▽]

 そのさらに先に行くと、道路の脇に建てられたガレージが目に入る。ガレージ内に停められた装甲多脚の下部ハッチが開き始める。
「ん? どしたの?」
 パイロットシートから顔を覗かせるのはジャージ。
「あれ? パパは?」
「錦さんはパーティの準備。そこのあんたの」
 シーバリウを指さす。
「なんだ、ちゃんと仕事してるんだ」
 コクピットシートが下がりきり、そこからジャージが降りる。その名の通りの小豆ジャージ、表情が全く見えない巨大なゴーグル、無造作に束ねられた長い髪は金色に近い色。
「6時からでしょ、私もパーティ招待されてるから」
「あ、私お手伝いしなきゃ。王子?」
 と、気付くと王子はガレージに入って装甲多脚を眺めている。
「王子ー、行くよー?」
「あ、はい」
 うめの方へと向き直るシーバリウ。でももう一度ジャージの方を向く。ジャージがコンソールに入力すると、天井からクレーンに吊されたアームが降りて、装甲多脚にブラシを掛け始めた。そのまま足を進めてうめと紫恋の所まで来る。
「そんなに気になる?」
 紫恋の質問でようやく視線を外す。
「はい、我々の概念ではあのような機械が魔法を使うというのは考えられませんから」
「確かに人間以外が魔法を使うっていうのは考えられないけど」
「あ、それはちょっと違うんです。魔法で作られた魔族と呼ばれる者は魔法が使えますから、あれもそういう例外のひとつなのかもしれません」
「ふーん」
 と説明されてもいまいち解らなかった。
 石段に差し掛かって。
「じゃね」
「あ、神主さんとママさんも呼んでって言ってた」
「ええ〜!? お酒飲めないじゃない」
「……一応うちんちでやるんだけど……」
「冗談よ冗談」
「なあんだ」
「父さんも母さんも寛容だから大丈夫」
「そっちかよ」
「じゃ、6時に行くね〜」
 たったったと慣れた足取りで石段を登っていく。
「……これ、毎日上り下りしてるんですか……」
 見上げるだけで首が疲れてくる……延々と続く石段、一番上にある鳥居、その間を駆け昇っていく紫恋……。
「あ……ア”ッ!?
 蹴りに上がる悲鳴。
「覗くなボケ!」