第2話 好きとスキと (12) [△ ▽]

「はー……」
 トイレの洗面所。
 顔を洗ってハンカチで拭いて鏡を見て、深々と溜息をつく。
「やってしまいました……」
 こちらでは波風を立てない、そう思っていたのに、たった2日目で……そもそも昨日魔法を見せたのが……いや、あれはうめさんを助けるためだから……でも今だって簡単に殺気に反応して……。
 あの瞬間。
 高士の殺気が、シーバリウに掛ける技を見させた。
 だからって、技まで掛けてしまうなんて……。
 とぼとぼとトイレから出ると。
「おっす」
 うめが待っていた。
「うめさん……」
「そんな気にしないの、先につっかかったの高士君の方なんだから」
「でも……」
「それに……」
 顔を赤らめる。
「?」
 それにあの時、私を助けてくれたんだし……。
「うめー」
 教室から出てきた紫恋が声を掛ける。
「紫恋さん」
「あ、……そうそうそう、高士君大丈夫?」
「全然大丈夫。王子がちゃんと受け身取れるように投げたって高士が言ってたけど、本当?」
「はい、本当は完全に腕を固定して床に叩き付けるんですけど、それだと怪我しちゃいますから」
「痛そー」
「でもああしても怪我する可能性もありましたから、本当は……」
「その点は大丈夫。高士は父さんより強いし頑丈だから」
「?」
「あ、高士君は紫恋の弟なの」
「!! ……そ、それは大変失礼しました! 弟さんを――」
「別にいいわよ。高士も謝ってた、自分のせいだって」
「あ……」
「パーティにも出るって言ってたからその時仲直りでもしたら? うめは今日どうするの?」
「私は帰るけど。パーティーの準備あるし」
「じゃ、帰ろ」
 ふたついっぺんに鞄を投げて、うめとシーバリウが受け取る。