第1話 空から王子が降ってきた (7) [△ ▽]

「別に、隠すことないよ。魔法なんて毎日っていうくらい見てるし、隠して欲しいんなら、私も黙ってるから」
「あ、はい……」
 本当は見られてはいけなかったのだろう、彼はうなだれていた。
 そうだとしたら。
 そんな禁忌を犯してでも助けてくれた、それは、本当にうれしかった。
「私は山田 梅。山田が苗字で梅が名前」
「うめさんですか、うん、いい響きの名前です」
 知らずに、うめの顔が赤くなった。
「し、しばくん……って嘘でしょ、ホントの名前、教えて欲しいな」
「あ……そうですね。私はコメネケ国第一王子、シーバリウといいます」
「お、王子……さま?」
「まぁ、そういうことになりますけど……それはそうと、その子犬どうしましょう」
「あ、えーっと、とりあえず……どうしようかな、みんなのところ戻った方がいいかも。あそこに神社が見えるでしょ」
 うめが指さす先、長い石段の上、鳥居の向こう神社の敷地に、数人の男女と、濃い緑色をした金属の塊が見える。
「うめさんのお友達ですか?」
「友達とパパ」
「お父様ですか、それなら早くお連れした方がいいですね」
 シーバリウが体を傾けると、二人の乗った杖は緩やかなカーブを描く。空が、雲が、山々が、視界へと現れては消える。ただシーバリウが抱きかかえているだけ、そんな目の眩むような高い所なのに、うめは、もう少し飛んでいたいと思って、胸板に頬を当てた。