第4話 機械の魔法、機械の天使 (23) [△ ▽]

「なんか今、ぞくっと来て、悪い報せかなにかかと……」
『あ、それはゴナツ様特有のものなんです。確かに新しい魔法を授与される時ってそういう感覚ありましたね。……毎回その感じがあるというのは問題かもしれませんね……』
「あーうん、魔法が成功したんならいいや」
 ジャージはほっと胸をなで下ろす。
 本当に、シーバリウに何もなくて良かった……。
『じゃあ、次は借威魔法の方ですね』
「あ、そういえば……でも、治癒魔法だから――――へ?」
 そんな変な声を出していたのは、むしろ、シーバリウが何をしようとしていたのか、気付いていたから。
ルィッツ!
 左腕を右手人差し指で撫でてそう唱えると、細く赤い線が引かれた。
「…………」
『それでは、お願いします』
「って、何やってるのよ!!
 そのスピーカーで拡声された叫び声は、シーバリウだけではなくまわりの家々や森の動物たちさえ驚かせた。
『じゃ、ジャージさん???』
「いくらこれから試すからって、あんたが自傷してどうするのよ!! そんなの待ってればいつか機会あるわよ!」
『それは違います。その「機会」は本番です。そのための練習が絶対に必要です。これがその練習なんです』
「………………」
 シーバリウの言葉は正論だ。本番にいきなりやっても成功する確率は低い。
『大丈夫です。それほど痛くありませんし、治して頂けるんですから』
「それはそうだけど……さっきの魔法だって、本当に成功したかどうかわからないし」
『それは僕が保証します。ちゃんと魔法は掛かりました』
「でも……」
『じゃあ、発想の転換です。僕は今、怪我をしています。だから、治していただけませんか?』
「な――」
僕のために・・・・・
 ――――――僕のために。
 それは、何気ないふとした言葉で、多分、シーバリウが意図してない意味で私に伝わっているんだと思う、そうに違いない……違いないんだから……。
 ジャージは溜息をついて。
「シーバリウ、私にそういう言い回しは効かないかないから。怪我したのあんたなんだからあんたが治せば、って話にしちゃうとこよ?」
『あ……』
 ふふ、と笑って。
「ま、今回は乗ってあげる。私はきつくはっきり言ってくれる方が嬉しいから」
『――――はい!』
「じゃ、ちょっと痛いかもしれないけど我慢しなさいねー」
 杖を振りかぶって、呪文を唱える。
ウォーツィー!傷よ治れ!